おぐら農園紹介(ちょっと自然にやさしい花づくり)   小倉 五郎     2015.2.4UP

 おぐら農園紹介

伊達市内上長和町の40アールの畑で販売用切り花・ドライフラワーと自家用野菜・果物を栽培
しています。
有珠山の火山灰土壌で養分・水分が少なく、手間をかけなければ作物は大きくなれません。
1985年に畑を求めて伊達に来ましたが、瞬間風速40mを超える風に、7棟ある栽培ハウスの
ビニールが全部飛ばされた事もありました。
おぐら農園では、できるだけ化学肥料・農薬を使わない栽培をしています。
理想としては自然循環型農業を目指していますが、労力的に難しく、実現は出来ていません。
販売は市場出荷と道の駅「だて歴史の杜」物産館での販売コーナーがあります。
ヒマワリ・センニチコウ・コスモス・ワレモコウ・小菊など懐かしい季節感のある花を栽培しています。
300円~350円を中心に束売りをしていますが、色々の花を組み合わせた花束に人気があります。
野の花の多くは水揚げが難しく余り長持ちしません。畑で栽培された花でも、ふと目をやると自然を感じる事ができます。本当は花びらに虫の食べ跡でもあると、もっと自然を感じる事ができると思うのですが、どうでしょう。

 
   

ミニ観察ノート(7) 「休眠芽」 0140618  樹木医 小倉五郎      2014.6.25UP

 
写真1=発芽したケヤキの休眠芽
 休眠芽

 家の周囲に植えた木は大きく育ちすぎると、生活にとって支障をきたす事があります。
 そうなると、太い枝を切り落とす強剪定をする事になります。
 切除する時期は落葉樹の場合は、葉を落としている冬期間が良いと言われています。木は春に備えるため冬の時期は、体内に多くの栄養分をため込んでいます。その為枝の切除による木のダメージを少なくする事ができるからです。
 太い枝には、通常の腋芽(冬芽)は殆ど存在しないのですが、春になると多くの個所から芽が吹いてきます。これは休眠芽と呼ばれ、以前に木が腋芽を形成しても、春に発芽しなかった芽が毎年蓄積されてきたものです。
 但し、葉の少ない元気のない木の太い枝を切り落とすと、栄養分不足で発芽しないことがあります。
葉は光合成をして栄養分を作ります。太い枝を切除された木は葉が少ない為栄養不足で枯れる危険性があります。
 強剪定した木は、葉がたくさん出てもその年は切り落とさず、2年目から徐々に枝づくりをして、木が栄養不足にならないよう、葉を十分に付けながら樹形をつくります。
 強剪定をしない様に木の樹形を一定の大きさで保つには、手間はかかりますが毎年小枝を剪定して樹形づくりをしていく必要があります。

*腋芽=葉の基部の枝に付いた芽


 
写真2=今春発芽しなかったミズナラの腋芽

ミニ観察ノート(拡大版)  メープルシロップ 小倉五郎(樹木医・森ネット理事)                                                                            2014.3.15UP

    
 光の春。落葉樹は前年の夏の間に光合成で得た栄養分などを蓄え、春を待ちます。寒冷な冬の間、樹体内栄養分の消費を防ぐ為、葉を落とし休眠していた落葉樹は3月に入ると、水分(樹液)を吸い上げ始めます。
 カナダの国旗に描かれているサトウカエデはこの時期
メープルシロップとしてケベック州などで樹液が採取されています。
 北海道でもサトウカエデから樹液を採取しているという話を聞きますが、我が家では同じカエデ属のイタヤカエデから
樹液を採取します。市販のストローが入る程度の丸穴錐で、外樹皮から中心に向って2~3センチ程の深さまで穴を開けます。
 木質のその辺りが樹液を吸い上げている導管部になります。
 穴から樹液がにじんできますので、曲がりの付くストローを浅く差し込み、紐などで幹にくくりつけたペットボトルにストローの反対側を差し入れます。
 この時、雨が入るのを防ぐ為、ペットボトルの入り口にできた隙間にビニールなどを詰めて塞ぎます。
 我が家のイタヤカエデは3本の株立ちですが、直径15センチの幹からは一日で350mlペットボトル1本以上採取できます。樹木が吸い上げる樹液の量の、1割程度採取しても樹木の生育に影響はないと言われ、大木になると50リットルも採取できるそうです。
 採取した樹液は鍋でコトコトと煮詰めます。糖分の量は樹液の2~3%なので40分の1程度に濃縮します。ほんのり甘い香りのメープルシロップはお好みでホットケーキや紅茶などに入れ楽しめます。成分としては砂糖や蜂蜜に比べ
カルシウム・カリウムなどのミネラル分の含量が多いのが特徴です。
 採取の折り開けた穴は、そのままにしておいてもやがて塞がりますが、ビニールでカバーをすると樹皮で早く塞がります。
 同じようにシラカンバからも樹液が採取されますが、糖分の濃度が低いのでミネラルウォーターとして飲むのが良いそうです。 保存は煮沸しなければ出来ないようです。
 シラカンバ樹液の採取時期は少し遅くなり4月上旬~5月上旬です。

      室蘭民報「自然いっぱい」掲載より加筆

ミニ観察ノート 落葉  小倉五郎(樹木医・森ネット理事)   2014.2.16UP

 

カシワ
 この地域で落葉樹は11月中旬には殆ど葉を落とします。
樹木は気温4度程度に低下すると基本的には光合成ができなくなります、
その為、葉を付けていると既存の栄養分の消費だけになり、木が衰弱するからです。
樹木の様々な生態は、光合成の収支に負う事が多いと言われています。
冬期間、カシワの葉が落葉しないで付いているのを良く見かけます。
この「ド根性の葉」はカシワの先祖が常緑樹だった頃の「名のこり」だとか、新芽を強い風や、潮風から防ぐ為と言われています。
先日「冬の自然勉強会」で、木の枝で越冬する蝶の幼虫が、枯れ葉をまとっている姿の展示を見ました。幼虫は寒さを防ぎつつ、「ド根性」の葉に真似ているのでしょうか。
*「冬の自然勉強会」=毎年11月~3月まで月1回伊達市カルチャーセンターで開催。


西胆振の木たち(7) モミ   小倉五郎(樹木医・森ネット理事)  2014.1.30

    
 写真は伊達市役所海側、鹿島青少年広場(鹿島神社跡地)に植栽されているモミです。
 樹高は16m、幹直径は1m余りあります。
 枝を横に大きく広げている姿が特徴的です。
 日本では、モミは東北地方中部から南に自生しています。
 以前に、市の依頼で鹿島青少年広場の植栽木を調査した事が
あります。
 その時はモミに対する認識がなかったので同定に迷ってしまいました。
 北海道では似たような自生木に、エゾマツ・アカエゾマツ・トドマツがありますが、これとは葉・樹皮等の特徴が違いました。
 また下枝が垂れるドイツトウヒの植栽木を良く見ますが、これとも違いました。 
 そこで高枝切りで葉を採取して観察すると、葉先に窪みがありました。
 これはトドマツの葉と同じ特徴といえます。
 そこでドドマツと同属の本州自生木だと考え、
 図鑑で照合すると、樹皮の特徴からモミである事が分りました。
 ちなみに、日本一のモミは兵庫県篠山市追手神社にあり、国の天然記念物で樹高34m、幹直径2.5m樹齢800年と紹介文にはあります。
 伊達市には東北地方に自生する木が開拓の経緯で持ち込まれていますが、
 このモミもその1本だと思います。(室蘭民報:「自然いっぱい」掲載文修正)

ミニ観察ノート 小倉五郎  (森ネット理事・樹木医)  2014.1.4UP

 
 冬になり広葉樹の葉が落ちると、針葉樹の緑が良く目につくようになります。
 北海道自生種の代表的針葉樹に「エゾマツ」(含むアカエゾマツ)と「トドマツ」があります。
 この2種は良く似たような木に見えますが、一番の見分けるポイントは葉の先端の形に違いがあります。写真のようにエゾマツは葉の先端が針のように尖っています。それに対してトドマツは葉の先端が尖らず、凹みがあります。
 両種ともマツの名が付いていますが、実はエゾマツはトウヒ属の仲間であり、トドマツはモミ属の仲間です。
 材木として、松材と同等に使える事からマツの名が付いたのかと推測されます。
 また、似たような木に伊達周辺地域には「ドイツトウヒ」と「ブンゲンストウヒ」(外来移入木)が多数植栽されています。あるいは数は少ないのですが「モミ」(本州移入木)が伊達市役所海側緑地などに見受けられます。
 
   


  シ ナ ノ キ 樹木治療 紹介(詳細)  理事・樹木医  小倉五郎                                                                             2013.12.18UP

  今年の秋(2013・10)大滝に向かう国道壮瞥町久保内「きのこラーメン」で有名な、食堂「ピッパラ」の駐車場に生育している、シナノキの治療を行いました。
 10月半ばに葉はすっかり落葉していました。  根元から高さ1mで分岐していた太い枝が折れ、そこから腐朽が広がり、水分が充分に揚がらない状態と診断しました。
 そこで
 Ⅰ、腐朽部の改善治療 
 Ⅱ、枝の適正な剪定 
 Ⅲ、土壌改良
  の3点の治療を行いました。

 
Ⅰ 腐朽部の改善治療
    
① 腐朽部分の除去
 太枝が折れた時に周囲の樹皮が剝がれるなどの大きな傷を受け、腐朽菌(キノコ菌)が侵入して、上下に腐朽が拡大した。その結果水分・養分の通路が減少して成育不良状態が現れ始めた。
 樹皮のすぐ内側の組織が、養水分の通路器官である師管・導管の細胞なので、その組織を再生させる必要がある。
 
② 整形後の状態
 腐朽部分をチェンソー・ノミ・ナイフなどで丁寧 に削り整形をした。
 傷周囲の細胞分裂がスムーズに行われ、傷を塞ぐように、また腐朽の進行が止まるように処置をした。
見た目からも端正な形状になるよう留意した。
 
③ 樹木保護剤塗布
   樹木保護剤は色々種類があるが、今回は「トップジンMペースト  」に墨汁を加えて、整形部分に刷毛で塗布した。
   腐朽菌(キノコ菌)を殺菌する薬剤は、現時点では開発されては  いないが、「トップジンMペースト」はカビ類に対して効果がある。
   また塗布する事により表面の固化と内部への水分の侵入を防  ぐ効果が期待できる。
 
④ 人工樹皮「ウツデイ―ドクター」塗布
   樹木保護剤の乾燥後、腐朽部分の凹部にセメント状  に練った人工樹皮「ウツデイ―ドクター」を塗りこんで、   幹の形状を整えた。
   長い期間、はがれ落ちる事はなく幹の形状を維持で  きる。
   乾燥後、「トップジンMペースト」を再塗布した。
   傷腐朽周囲の細胞が分裂増殖をして、この部分を塞 ぎ始めれば治療は成功。その為には、光合成を盛んに して栄養分を傷周囲に届ける必要がある。
   *今回傷周囲の樹皮が巻き込まない場合は「不定根  誘導」と言う治療法もある。
 
Ⅱ 剪 定
   剪定をする事により、樹形を整えるという景観的面からとしての 要素がある。
  治療面からみると、栄養分を幹の生育や、根の栄養分補給に役 立てる事の出来る、光合成能力の高い葉を多く付ける必要がある。
  その為には1枚1枚の葉に充分光が当たり、風通しの良い環境作 りをしなければならない。
  重なり枝・内向き枝の除去などの透かし剪定と枝先端の切り詰め 剪定をした。
 
Ⅲ 土壌改良
  幹の周囲、枝の先端部の真下に深さ40cm程度に壺 状の穴を12か所均等に掘り、 今回は有機質肥料をふ たつかみ程度穴に入れ、土壌を混ぜて埋め戻した。
  養分の補給と土壌改良が目的である。

  (古木の治療では土壌改良が一番大事である。)
 
 施工後の状態
   樹形が整い、腐朽部が改善されて、見た目からも健全な姿に改  善された。
   このシナノキが本当に健全に育つ為には、葉での光合成が盛ん  に行われ、そこで生産された栄養分が幹の細胞分裂を促し、腐朽  部分に樹皮が巻き込み初め、根の活動が活発になる事が必要で  ある。
   今回の治療はその為にシナノキの生育環境条件を整える事で、  シナノキの生命力が引き出せれば、今回の治療は成功と言える。
                    写真撮影=木村益巳代表理事


ピッパラのシナノキの治療 NPO森ネット理事・樹木医 小倉五郎 2013.12.11UP

  10月下旬:協賛会員であるピッパラ(壮瞥町久保内の食堂)の駐車場に植栽されているシナノキの治療をしました。
 幹に腐朽がある事と、樹形が乱れている事の2点を改善しました。腐朽を削り取り、整形して樹皮保護剤を塗布しました。
 樹形は重なり枝・平行枝を切除して、自然形仕立てにしました。大滝に向かう国道沿いなので、一度見学して下さい。
 名物「きのこラーメン」もあります。 
        
 
 
 

ミニ観察ノート(6) キウイフルーツ  樹木医小倉五郎  2013.11.14UP

 写真は我が家のキュウイフルーツの葉と果実の写真です。地域に自生しているコクワの仲間になります。
中国が原産地で、ニュージーランドで改良されたと聞いています。 市内の所々で見かけますが、伊達は北限の栽培地だと思います。
 夏に伸びる蔓を切り取る剪定をしていれば、果実は付きます。但し雄木と雌木が別なので両方を植えなければ、果実は付きません。我が家では生食やジャムでおいしく食べています。
 低気圧の強風で吹き飛ばされたキュウイフルーツの葉がふと目に留まりました。なんと素晴らし葉脈の形だろう見入ってしまいました。 画家でもこんな素晴らしいデザインは創作出来ないでしょう。
 一般的に双子葉植物の葉脈は網目状で、単子葉植物は平行脈です。葉脈の機能は、根から吸い上げた水分とミネラル分を葉の隅々の細胞に運ぶ導管と、逆に光合成により細胞でできた養分を、幹や根に運ぶ師管の役割からなります。
 まるで私たち動物の血管の動脈・静脈と同じような働きをしています。身の回りにある生き物をふと見かけた時、思わず感激してしまう事がありますが、この1枚の葉もそのひとつです。

 

 

樹木実践講座5 9/27 樹木医 小倉五郎 2013.10.5up

 小倉コメント後日

 
小倉 花畑
 
小倉 ハウス
 
参加者・スタッフなど記念撮影
 5回を終わって、参加者の感想

●初めためらっていたが、わかると自信をもって切れる。
●講師の自然への愛情を感じた。
●参加して2つ-3つ知恵がついた。まだ物足りない。来年も 続けてほしい。
●庭はあっても、今まで勉強せずにいた。講座で扱いが理 解できた。
●本州の木とは随分ちがうことがわかった。
●室蘭にはないもの、参考になった。
●どっちへ伸びようとしているのか、木の心がわかったよう な気がした。今までは元気の良いものを残していたが、ソ ウではなかった。
●実際の剪定を見て、見方がかわった。
●木の剪定は楽しい。

 などなど。

 5回の樹木実践講座、お疲れ様でした。

樹木実践講座4 8/23 樹木医 小倉五郎 2013.8.28UP

   
 第四回の樹木実践講座は、末永Kさん宅の庭で行いました。
 Kさん宅は建物を敷地の端にL字形に寄せて、広い庭を確保
しています。6年前に何もなかったところから庭作りを始めて、今ではたくさんの種類の樹木・庭の花・野草が育っていました。
 小さな池もあり、トンボやカエルも住みついているようです。
 井戸を掘って庭の水やりに使っているとのこと。
まず、Kさんご夫妻にこの庭のコンセプトを紹介していただきながら見学しました。ここは、元は川だったようで砂地の為水はけの良い土のようです。でも伊達は樹木の生育が良いとKさん。
 その後参加者が剪定の実習をしました。今回の剪定は大きくなったヤマグワでした。
 この庭には四季を通じていろいろな生き物がやってきますと、うれしそうに語ってくれたのは奥様。野鳥・エゾリス・昆虫、そしてなんと、こわいスズメバチやヘビまで。自然がいっぱいの庭ですね。(きむら記・写真は太箸さん)
 
 
 
 
 
 ブナの違い生育について説明する小倉さん
 
 庭のデッキ。タープが日差しを遮りさわやか


庭のキジバト 小倉五郎(樹木医)  2013.8.9UP

   

  10年前に、家のすぐ前にある五葉松から、ヤ
 マバトの雛が二羽巣立ちました。
  それからは毎年、家・畑の周囲でヤマバトは
 子育てをしていましたが、今年久しぶりに、ベラ  ンダの窓から観察できるブナの木に巣を作りま
 した。
  気が付いてから2週間ほどで雛がかえり、ヤマ
 バト1はその1週間後の写真です。
  ヤマバト2・3は12日後で、ヤマバトらしくなっ
 てきました。
  伊達に住み始めた28年前に植えた、家・畑
 周囲の木々は、多くの生き物の支えになりまし
 た。   (ヤマバト=キジバト)



   
   

樹木実践講座3 6/28 樹木医 小倉五郎 2013.7.3UP

三回目の講座を竹原町Mさん宅で行いました。28年がたった庭は大きな庭木があり草花が綺麗に咲いていました。
Mさんから庭の説明を受けて、庭に合う自然木(低木)・野草の説明、その後剪定の実践が行われました。
次回は8月です。

 

 



樹木実践講座2 5/24 樹木医 小倉五郎 2013.5.29UP

 講座2回目は、樹木の生育の基本、樹木の健康診断、剪定、傷の手当てなど中身の濃い講座でした。

 
百日紅?の剪定
 
幹の傷の手当て
 
 黒松の剪定
 
 弱ったドウダンツツジの診断


森ネットの新事業「樹木実践講座」 樹木医 小倉五郎 2013.4.30UP
------自然を取り入れた庭の作り方・管理の仕方---地域の自然を我が家に呼び込もう-----

  森ネット行事は、多数参加が中心になりますが、今回は、全5回・人数限定の中身の濃い企画です。森ネット理事小倉が講師です。
 一回目は、4/26、田園関内H宅とI宅で行いました。
 H宅では、高木から低木までの自然木を植樹。カツラ、エゾヤマザクラ、トチノキ、ガマズミ、マユミ、ムラサキシキブ、ハルニレなど。これから樹種を増やす予定。普段気のつかないプロの知識と技術が披露され実践を行いました。
 次回は5月。
 

 庭での植え方
 

西胆振の木たち(6) カシワ   樹木医小倉五郎 2013.4.8up

    
 伊達市内には樹齢を重ねたカシワの木が各所に生育しています。
 写真は市内弄月町の「一本カシワ」です。
 室蘭に向かう国道37号沿いシェル石油スタンド向かいに単独で聳えています。
 測定してみると、幹直径70cm、樹高13m程あり、伊達市の「記念物」に指定されています。
 葉には波形の縁があり柏餅でなじみがあります。
 昨年秋、「縄文スクスクの森づくの会」の観察会の折昆虫研究家永盛俊行氏(伊達緑ヶ丘高校教頭)からカシワの芽に産卵されたキタアカシジミの観察・説明がありました。
 カシワが食草でシジミチョウが生育しているとは、その似つかわしの無さに、自然の営みの奥深さを感じます。
 カシワは春に新芽が出る頃まで、枯葉が落ちにくいのが特徴です。
 その昔、カシワの先祖が常緑樹の時代のなごりと考えられています。
 または、冬芽を風や寒さから守っているとも考えられています。
 カシワのような広葉落葉樹は名前の通り冬期間は葉を落として休眠し、
夏に向けて温度の上昇と光量の増加を待ちます。
 樹木(植物)は二酸化炭素と水を材料に光合成によって、エネルギーを自ら生産しています。
 北海道などの寒冷な地域では冬期間温度の低下の為、たとえ葉を付けていても光合成が殆どなされず、逆に、葉を付けている事によるエネルギーの損失が多くなります。
 また、実際には葉の凍結により落葉してしまう事となります。
 そこで広葉落葉樹は葉を落とし活動を休止して、春を待つ生活パターンを獲得したわけです。
 このように樹木(植物)の生き方は、光合成による生産いかんに大きく左右されています。



西胆振の木たち(5) ケヤキ  樹木医小倉五郎 2013.3.5UP

   写真はケヤキの冬の姿です。
 本来は箒状の形に広がる枝が美しく、関東平野武蔵野の代表的風景です。
 また緑豊かに街並みを覆う仙台市のケヤキ並木は有名です。 山形県東根市には樹齢1000年の国特別天然記念物の巨木があります。
 自生地は青森県以南までで、従って道内では植栽した木という事になります。
 この写真のケヤキは伊達市役所前駐車場から郵便局に抜ける歩行専用道の傍らにあります。測定してみると樹高13m(目視)、胸高の幹直径は100㎝ありました。
 伊達市の記念物に指定され、開拓期の神社境内にご神木として植栽された由緒があります。
 現在、このケヤキは根元など周囲の環境が樹木の生育にとって適さず、今後の生育は心配な状態です。写真で見られるように、樹上部に数本がブツ切りされた切除跡があります。これらの枝からは根元に向けて枯れ込みが入っています。 また、写真の裏側地上高6m付近幹には、枯れた太い枝の突き出た切除跡が複数あります。
 このままにしておくと幹内部に更に枯れ込みが入り、やがて腐朽菌が侵入して、根元に空洞ができる事になります。
 早い内に枝分れをしている位置で適正に切戻し、樹皮が巻き込む環境を整えなくてはなりません。
 このケヤキの様な開拓期に植栽された貴重な樹木を未来に残す事は、現在を生きる私たちが果たさなくてはならない役割です。
 歴史と文化を繋いで行く事の大切さは、失った時に初めて気が付くものです。

ミニ観察ノート(5) 花の冬芽  樹木医小倉五郎  2013.3.5UP

 
  西洋シャクナゲ
 冬芽を観察すると、同じ枝にふっくらとした丸い芽と小さいまたは細長い芽の2種類の芽があるのに気づきます。
 これは、ふっくらとした花芽と葉芽の違いによるものです。
 多くの木は前年の夏の終わりには花器官が形成され秋には休眠に入ります。
 やがて冬の寒さで目覚め、じっと暖かくなる春を待っています。
 花芽は枝の先端や、少し下の芽に付いているので、剪定で刈り込んでしまうと、春に花の咲かない結果になります。
 写真3枚は家の周囲に植栽してある事例です。
 特にブルーベリーは果実の収穫が楽しみなので、その前を通るたびに、花芽を確認します。
 ① シャクナゲの仲間は大きな花芽を付けるので、容易にわかり  ます。
 ② アジサイの仲間の花芽は枝の先端より数芽下に花芽を付け  ます。
 ③ ブルーベリーは先端とその近辺に花芽を付けます。
 
 アジサイ
 
 ブルーベリー

西胆振の木たち(4) 伊達市大町のシダレヤナギ  樹木医小倉五郎  2013.2.3UP

 
 イオン伊達店を海側へ向って交差点左側にこのシダレヤナギは生育しています。
 樹齢は115年と推定され、樹高は12m、幹直径は1,1mです。 図鑑によると、原産地は中国東南部で日本をはじめ世界各
 地に植栽され、日本には奈良時代に入って来たとあります。
 平成16年9月、台風18号の強風により高さ4~5m付近の分岐した太い幹2本が大きく折れ道路を塞ぎました。
 折れた幹の断面をしらべると、やはり心材部に大きく腐朽があり、強度が低下していました。
 この時シダレヤナギは枝葉の半分程度を失う大きなダメージを受けました。
また当時樹高17mのこのシダレヤナギは根元付近にも空洞があり、計算すると空洞率66パーセントでした。70パーセントを越えると強風などで倒れる危険度が高くなります。
 この地域のシンボルツリーである事から、伊達市からの依頼で回復治療を引き受けました。
 作業は高所作業車を使い、幹折損部断面二箇所を丁寧に整形して、樹木保護材を塗布しました。また、シダレヤナギにかかる風圧を弱める為、上部樹冠部の枝を5m程切り詰め、樹高を下げました。この事により樹体下部に新しい芽の萌芽を促し、将来の枝づくりも準備しました。
 幸い樹勢は回復をし、現在美しいシダレヤナギの樹形を保っています。
 このシダレヤナギは交通量が多い交差点にあり、充分枝を伸ばす事ができず、植栽枡が小さく、深植え(道路を改良するたびに土が根元に被される)の状態にあります。
 今の生育地の環境では抜本的にこの問題を改善する事は出来ませんが、毎年定期的に枝の剪定・土壌改良など管理作業を継続する事によって、地域のシンボルツリーとして維持していかなければと思っています。
 同様に伊達市内に生育する古木・記念樹の多くは厳しい成育環境にあります。次の世代に引き継ぐ為には適切な保護策が緊急の課題となっています。

ミニ観察ノート(4) 冬芽   樹木医 小倉五郎 2013.2.3UP

 
 樹木は、葉の落ちた冬に樹種を特定するのはなかなか難しい事です。
 樹形や樹皮でおおよその判別ができる事もありますが、枝を手に取って冬芽を観察する事が良い方法のひとつです。
 写真は左から
 ミズナラ(先端に側芽が輪生につく)
 ブ ナ (長細めで先がとがる)
 キハダ (葉痕の中央部に半球形につく)
 カツラ (赤褐色の小さな芽が対生につく)です

 冬芽の、大きさ・形・付き方(対生・互生など)・芽鱗(がりん、冬芽を被覆する鱗片状の枚数など)等の違いを植物図鑑と見比べると、樹種は判明できます。
 樹木は、夏にはもう冬芽が付いていますので、葉と同時に観察すると樹種が確実に判別できます。
 寒さに厳しい冬、虫メガネを手に枝を観察すると、新しい世界が見えてきます。


西胆振の木たち(3) 有珠・大臼山神社 シナノキ 樹木医小倉五郎 2013.1.6UP

 
 
 伊達市有珠善光寺自然公園の岩石が織りなす多様な自然は、多くの皆さんが御存知の事です。
 有珠にはまだまだ「自然の見どころ」が随所にあります。そのひとつが、シナノキの大木です。
 場所は有珠湾を望む白鳥館の伊達側高台に大臼山神社があります。その鳥居の石段を上がって神社の左手奥、林の中に生育しています。
 
  踏み分け道を近づくと有珠山8000年前の「岩屑なだれ」の大岩の上に鎮座する姿には、一目で圧倒されてしまいます。
江戸時代1663年の大噴火による火山灰に半ば埋もれたこの岩の上に、時が経てシナノキは芽生えたのでしょう。
やがて火山灰と岩の隙間に沿って伸びた根は、その後の風雨で周囲の火山灰が徐々に洗われ、幹化した根が露出したものと想像されます。岩の上の根元の姿から複数のシナノキの芽生えが合体したとも
考えられます。
有珠には善光寺石割桜をはじめ、根が大岩を抱いた樹木が数多く見受けられます。
有珠山噴火の歴史の中で樹木・森が再生してきた道のりを垣間見る気がします。ジオパーク指定を受けた有珠・洞爺湖地域にとって、このシナノキの大木は噴火と共に歩んだ証と言えるでしょう。

 *昨年初秋、伊達の木を巡るグループに同行した折、神社からシナノキに至る道は、すっかり雑草に覆われ、入る事ができませんでした。見上げるとシナノキの大木は山側半分がクズの蔓・葉に覆われていました。
 この状態を放置しておくと、強い日陰になり今年には枝が枯れ始めると思います。この春、葉が開く前にクズの蔓を除去する作業をしなければなりません。
関係方面と話をした上で、「森ネット」のメンバーに参加を呼びかけますので、その折はよろしくお願いします。

ミニ観察ノート(3) シナノキの特徴  樹木医 小倉五郎 2013.1.6UP

   

 葉は基部が写真のようにハート型の心円形。
 葉のふちは鋸歯縁。
 葉の長さは写真では6センチ程度
   
 冬芽は写真のように広卵形で、これぞ木の芽と言う感じがする。
 枝の芽の付き方は互生(葉の付く位置が互い違い)。  
  
 地域の植生調査によると海岸に近い山地に生育する。
 伊達市若生町の水源池にもシナノキの大木がある。
 材は、白い木肌が美しいシナベニヤとしても利用されている。
   
 *類似種にオオバボダイジュがある。シナノキに比べて葉が大柄である。

 

西胆振の木たち(2) 有珠善光寺三本杉  樹木医 小倉五郎 2012.12.24up


 有珠善光寺本堂に向かって左手に、写真のように大きく聳 える3本のスギが生育しています。
 案内表示板によると、善光寺建立(1804年)以前から、この場所に生育しているとあります。現在は樹高39m。幹直径101cm、101cm、87cmで樹齢290年と推定しています。 ちなみに樹高日本一の秋田県「きみまち杉」は資料によると樹高58m、幹直径164cm、樹齢250年となっています。
 三本スギは伊達市の記念樹指定であると同時に北海道の保護樹でもあります。善光寺周囲は気候穏やかで湿潤なスギの生育適地であり、これらのスギは枝の枯込や傷・腐朽も殆どなく健全な成育を示しています。
 スギの自生地北限は青森県南部であり、北海道でスギは自生していません。
 道内では比較的温暖な日本海沿岸や道南地域に植栽・植林されています。
 札幌円山公園や室蘭南部陣屋跡の植栽地、渡島半島知内町などの木材生産目的での植林は知られている所です。伊達では各地に植栽木があり、開拓記念館庭園や長和神社など開拓ゆかりの地で多く見受けられます。
 また有珠ポロノット公園には明治時代に植林された樹高30m程度の植樹林があります。北海道でのスギには違和感もありますが、江戸期や明治期の本州あるいは和人との歴史的関わりを感じ、考えさせられる存在のひとつです。
 


ミニ観察ノート(2) 裏杉と表杉   2012.12.24up


 二つの杉の葉は有珠善光寺三本杉と境内駐車場入口側杉の1本からの写真です。
 葉が短くひも状のものは三本杉、葉が荒く斜上に広がっているものは駐車場入口の杉です。それぞれ裏杉、表杉と呼ばれています。
 裏杉は積雪の多い本州日本海側に生育し、葉を短く、枝を垂れ下げて雪の害を防いでいます。
 表杉は積雪の少ない本州太平洋側に生育し、太陽の光が良く当たるように葉を拡げています。しかし大雪の際には葉の間に雪が詰まり、その重さで折れる可能性が高くなります。
 渡島半島の植林やポロノット植樹林は裏杉に対して、開拓記念館は表杉である事など、道内各地の杉の葉を調べてみると、杉の導入の経緯の一端が分かると思います。

 
  裏杉

 表杉
 

西胆振のたち(1) (小倉五郎のページ)

   
西胆振のたち

 北海道の南西部に位置する伊達市は年間平均気温が街なかでは摂氏9度Cを超えます。この気温は測候所観測では津軽海峡を南に渡る気温に匹敵します。
 この地域の自然植生は主に夏緑広葉樹林帯に属し、市街地周辺ではシナノキ・ハルニレ・イタヤカエデ・ミズナラ・ヤマグワ・カスミザクラ等が成育しています。                 
 一方、移入木では北海道では見る事の少ないツバキや甘カキが街なかで寒さに耐えるギリギリの成育をしめしています。
 伊達市は明治期に宮城県亘理町をはじめ東北地方の人々の入植者が多く、故郷の郷愁木や殖産の為に様々な木を植栽したようです。スギ、クロマツ・アカマツ・モミ・ヒノキの針葉樹、ケヤキ・ヤマボウシ・キリ・クリなどの落葉樹が良好な成育をしています。
 また外国からのノニレ・シナサワグルミの大木が成育し、丘陵地帯にはニセアカシヤが我が物顔に生育地を拡大しています。
 公園や庭ではサツキ類・園芸種のサクラ類など道央以北では成育の困難な木を普通に見る事ができます。
 果物の栽培でも北海道では寒冷から無理とされる渋柿の平核無柿系統種やキュウイフルーツがまずまずの成育を示し、実を付けています。
 西胆振地域は北海道内では温暖な地域である事から、多様な木を見る事ができます。
 地域の本来の生態系を支える自然植生の木を育む事が重要であるのは勿論の事、身の回りに栽培木され、人々の暮らしに潤いや、果実が食べる糧になる木についても、
「西胆振・この木 何の木」と題して次回から掲載予定です。(おぐら農園・小倉五郎)


 ミニ観察ノート(1)  ~葉痕(ようこん)を調べよう~

 
 オニグルミ(人の顔形)
  ~葉痕(ようこん)を調べよう~

 葉の付いている時期ですと、葉の形か
ら木の種類を判断する事ができます。
 葉の落ちた冬にも、木の種類を判断で
きる、
すばらしい材料があります。
 オニグルミとヤチダモは樹形や木肌
の色が良く似ています。
 葉の取れ落ちた跡を、
葉痕と言いま
すが、写真でご覧のように、その形
の違いを良く見る事で、木の種類を
正確に判断できます。 
    



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ヤチダモ(楕円形形)